【Love Communication】
今日も今日とて、厳しい激務に疲れた身体を引き摺るようにして、家に帰り着いたのはもう真夜中と云っていい時間だった。
腹を満たすためにと手近な居酒屋で同僚達と1杯交わし、ほろ酔い加減で自室のベッドに寝転がる。身体は酷く疲弊していたが、適度に入れたアルコールのせいか、持て余す何かに煽られるように、幾ら姿勢を変えても一向に睡魔は訪れない。
「あ〜………何か目ぇ冴えちまったな〜………」
ぼやく身体を宥めて、仕方なく浴室へと足を動かすために起き上がった。
気ままな男の1人暮らし。
聞こえがいいんだか悪いんだか分からぬが、部屋に華を添えてくれる誰かがいない部屋では取り繕う必要もなく、熱いシャワーで火照った身体を隠しもせず、スエット1枚で部屋に戻る。
その際、冷蔵庫に何時も切らした事のない缶ビールを手にする事も忘れずに。
蓋を開けてその苦味の液体を1口含み、これもまたビール以上に切らした事のない煙草を咥える。
夜も更けた静かな部屋の中では、ビールを飲み下す自分の嚥下の音だけがやけに耳に付いた。
「俺も大概………溜まってるよな……」
それは日々の激務によるストレスであったり、疲労であったりもする訳だが、それ以上に渇きを覚えるのは、真っ当な20台の男としての、自然な本能の欲求。
「あいつ今頃、何しってかなぁ〜………」
夏空を思わせる薄い青瞳を閉じればすぐに浮かべる事の出来る、鮮やかな金の光。
誰よりも眩しく煌めく至上の輝きに満ちたその存在を想うだけで、今にも堪えていた何かが胸を焼く衝動に駆られる。
自分よりも遥かに年下であるにも関わらず、その背に負う重い宿業は常に彼の足を前へと突き動かし、一箇所に居を据える事もままならない放浪の旅を続けている愛しの恋人。
まさか自分がそんな年少の同性相手に恋心を持つことになるとは思わなかったが、一旦気付いてしまえばどれだけその存在を欲していたか、嫌でも思い知らされた。
筆不精どころか義務付けられている軍への定期連絡すら滞る彼の消息は、何時も唐突に直属の上司にもたらされる報告によって。
逢えない日々が1ヶ月2ヶ月なんてざらにある。
それでも今まで付き合ってきた相手と違って、諦めようだとか、もういいか的な投げ遣りに思ったことは不思議となく、ただただ律儀な忠犬が餌をもらえるのをひたすら待ち侘びる如く、その存在の帰還を心から願っていた。
けれどやはり身体は正直なもので。
健康優良児を地でいく健やかさは、反面満たされない欲求に抱える憂鬱さも持ち合わせていて。
何処の空の下にいるか知れぬ恋人の姿を想えば、自然と腰に溜まる熱に自嘲が浮かんだ。
「大将〜、あんまり構ってくんねーと、浮気しちまうぞ?……」
呟く独り言は、余りに現実味を伴なっていないのは承知の上。
他の誰かでこの熱が収まるなら、とっくにそうしている。
けれどもうあの金の光を湛えた彼でなければ、哀しいかな自分の欲求を満たすものはない。
最後の一滴を飲み干して、片手で潰した缶を無造作に放る。
こんな怠惰な姿を見たら、輝く金瞳にきつい光を浮かべて彼は叱るだろう。
『あんた不摂生しすぎ!男の1人暮らしでも、程度ってものがあんだよ!』
少年らしいアルトの響きでこちらを諫めて、そしてきっと次には少し照れたように微笑って告げるだろう。
『ったく、これじゃどっちが年上だか分かんねーよな?』
ああもうホントに、何で今この場で彼を抱きしめられないのだろうか。
鮮やかな輝きを持つ髪と瞳、鍛えてあるとはいえ線の細い肢体は両腕に包めば腕が余るほど細くしなやかで、旅暮らしの割りに日に焼けない白い項に鼻を寄せればいつだって、日向の香りのように甘い体臭が漂っていた。
「あ…………やべ………」
思い出しただけで反応してしまった素直な半身に気付いて苦笑する。
10代の頃とは違い、そんな反応を慰める事にもう羞恥は余り覚えなくなった。
自分を不摂生呼ばわりするくせに、当の本人は薄情極まりない恋人を想って慰めるのも非常に味気なくはあるが、それももう慣れた事。
「…………っ……」
スエットの中に右手を差し入れ、頭をもたげ始めていた半身に指を絡める。
目蓋を閉じれば浮かぶ白い肩に散る金糸の輝きを追って、右手に力を込め始めた。
「く…………っ……」
普段はきつい眼差しに天才と称された叡智に満ちた鋭い光を浮かべる瞳が、寝台の上でだけ、甘く潤んだ光を点して瞬くのを知ってる。
少年らしい勝気な笑顔もよく似合うが、頬を染めて苦しげに、でも何処か悦ぶように秀麗な眉根を寄せて熱く息をこぼす様は、どんな美女よりも艶やかで。
階級でしか呼ばないアルトの声が、切羽詰ったように自分の名を呼ぶ時にはもうどちらの熱か分からないほど溶け合って、交じり合って。
何度抱いても治まらない快楽を追って、意識が飛ぶまで抱き尽くしたいと願った相手は唯1人。
「………………エド……っ…」
滾る欲望の解放まであと少し。
しかしそれを押し留めたのは、玄関を叩いた小さく無粋なノックの音だった。
「……………………………………………誰だこんな時間に………」
苛立ち紛れに吐き捨てた言葉はさも当然。
無視してこもった熱を吐き出してしまいたいが、己の職業は突然の事態に対していつでも対応を迫られる義務が課せられている。
「………緊急のものでなかったら、ブン殴るぞ」
本音を云えば自慰に浸っていた自分が少しだけ気恥ずかしく、それでも治まりのつかない熱が身体に残る倦怠感に、殊更ゆっくり腰を上げてTシャツを羽織って玄関に向かった。
「……どちら様〜?」
声に宿る不機嫌さは隠しようもないが、今の時間を考えれば何処の誰でも対応に変わりはないと思う。
「………………………………………………………俺」
だがそんな気分低下は一瞬で掻き消えた。
台詞だけなら何処の俺様かと本気で問い質したくなるものであったが、響いた聞き覚えのある低いアルトに焦ってドアノブを回す。
驚く青瞳の視界に、薄暗がりに佇む煌めきが夢のように眩しかった。
「………大将?いつこっちに?」
急激に渇きを訴える喉はひりついて、上手く声を出すのが難しい。
掠れないようゆっくり問いかけてみれば、夜でも眩さを失わない金瞳がさらりとこぼれる前髪から見上げていた。
「さっき最終で着いたばっかり。途中列車故障にあって、着くのが今になっちまったんだ。時間も時間だから、明日来ようかと思ったんだけ…どっ!……」
続く言葉を遮って、夢ではない本物の感触を強く腕にかき抱く。
「しょ、少尉っ!こらっ…」
「あ〜〜〜〜〜〜本物だ〜〜〜」
暖かい体温も、甘く香る体臭も、腕に残る重さも全て紛れもなく今の今まで欲していた想い人の確かなリアリティ。
信じられないほどの幸運に、思わず抱き寄せた腕にこもる力が強すぎたのだろう。
逞しい腕の中に捕らえられた細い肢体は、必死に振りほどこうと抗いをみせる。
「少尉!バカ離せって!苦…し………っ?」
「大将?」
両腕で突っ張っていた手からふと力が抜け、時間を考えて潜められていた声音が途中で途切れた。
それに気付いたハボックが声を出す前に、エドの金瞳が一瞬剣呑な光を帯びる。
「………………少尉、なんか、俺の腹に、…………当たってんだけど?」
静かに告げられる言葉に、広い背中に冷や汗が伝った。
『ヤベェっっ……!!』
だらだらと流れる汗とは裏腹に、へらりとこぼれた笑顔からは言葉に詰まる。
生憎想い人本人を目の前にして、今の今までそれをオカズに1人慰めてました……なんて、口が裂けても云える訳がない。男の沽券(股間?)に関わる。
「た、大将、これは……」
「誰かいんの?だったら俺帰るけど」
あっさりそう云って身を翻しそうになる身体を抱き止めて、少々強引に部屋の中へと連れ込む。
勿論散々抵抗はされたが、部屋の中には2人以外の人影があるわけもなく、呆気に取られた感のある秀麗な面差しが小首を傾げる。
「……………………え〜っと………少尉?」
もう言い訳の仕様もないのだが、他に気の利いたことが浮かぶはずもなく、ハボックは手を置いた頭をがしがしと掻いてみた。
しかし湧き起こった沈黙に先に根を上げたのはやはり背高の青年の方で。
「………………ゴメン……大将に逢えなくって…………欲求不満気味…………」
「え……えぇ………って……?!…」
直球過ぎる物言いに、エドの頬に照れのような喜びのような朱色が浮かんだ。
見上げていた視線をずらした細い肢体を後ろから抱きしめ、屈んだ拍子にその耳元に小さいボヤキを送る。
「大将、すぐさま『浮気かっ?』って思われるのは妬かれてるのか信用ないのか、どっちなんでしょーかねぇ?」
はははと、力なく笑う声音に、返す言葉もないとはまさにこの事。
不義理をしている自覚はあるし、いつも待たせてしまってばかりなのも承知している。
自らが決めた道であるから、振り返らず進む事に躊躇いはないが、だからといって想い合っている相手に淋しい気を抱かせてしまう事に反省の色がない訳じゃない。
本当は何時だって不安はある。
ハボックの真摯な想いを疑うつもりはないが、それでも他の誰かに気を取られる事もあるだろうと…………覚悟は常にしていたはずでも、いざそんな場面を目にしてしまって、平静でいられる自信もない。
先に怒りを向けてしまうのは、自分が傷付く事を恐れる気持ちを攻撃に摩り替えているだけだと、エド自身分かっていた。
「…………………ゴメン少尉………疑ってなんかない…少尉の事は信じてる……」
その台詞に、ハボックは心の底から重い溜息を1つ盛大に吐き出す。
「……………?……なに……」
その重みに不審を感じて肩口から振り返る金瞳に映った、思いも因らぬほど熱を帯びたアイスブルーの視線。
「………大将、俺今溜まってるって、云ったばかりだろーが」
「うん?…あっ!ちょ……」
摺り寄せられる身体の中心の熱が、抑えられてた欲望を移しとって大きく孕む。
「んな可愛い事云われたら、もう抑えられんだろー?責任取ってくれよ、大将」
「しょ、少尉!俺まだ着いたばっかで、埃臭いと……かっ…!」
「気にしない」
「俺が気にするっつーの!」
囲い込まれた腕の中でじたばたとあがいてみるが、その体格差は歴然としていて、過去に1度だってこの腕の中から逃げ出せた例はないのだ。
抗ってる間にも、クンと犬のように項に鼻を摺りその体臭を嗅いでペロリと舌を這わせられる。
「……っ…!…」
その僅かな行為だけで明らかな悦びの反応を示した愛しい肢体を見やって、ハボックの顔に精悍な表情が過ぎった。
「全然臭くなんかねーよ。それどころか、汗の匂いにそそられる……」
汗ばんだ中に香るエドの体臭は、遠い昔を連想させる陽だまりの様な暖かく清しいもので。
それを嗅ぐ度にハボックの中では、郷愁と情欲という相反した、けれどどちらも強い衝動が湧き起こるのだ。
「大将……大将…早く俺…お前ん中入りたい………」
「…っあ!……しょ……いっ……」
手早くコートと上着を脱がされ、気付けば先程までハボックが1人自分を慰めていた場所で、下着まで脱がされて組み敷かれていた。
ベッドの上まで行く余裕はなかった、お互いに。
「んっ!……ふ……ぅんっ………!」
いつもハボックが身にまとう煙草の香りと共に、舌先から苦いアルコールの味が香る。
そのせいか普段より熱い舌や掌の温度が性急に身体を這い回す仕草に、エドも自然と煽られていくのを感じた。
「し…しょ…いっ!……なんか……はやっ………て!」
「ん、ワリ………ガマンできね……」
「ぅ……あっ!……く………ん……っ!…」
首筋から胸元、脇腹から腰にかけて、ハボックの今の焦燥を表すように口唇が次々と滑り落ちてゆく。
熱く湿った舌先が辿るそのラインは巧みにエドの感じる場所を的確に捉え、僅かな間に腰に熱が溜まり始めるのを自覚したその肢体は、うっすらと薄紅色に染まり始めた。
それを目にした青瞳が、愛しげに細まる。
「あぁ……綺麗だな大将………」
「もっ!……あんっ…たは……ソレばっか……」
大きな掌に中心を握りこまれて、背筋がぞくりと跳ねるのを、宥めるように白い額に1つキスが落とされる。
「俺も…っ……男なんだから………キレイと…か…違うだろ……っん!」
乱れる呼吸を抑えながら途切れがちに吐く悪態ですら、その掠れ具合が更に欲情に火を注ぐことになる事に、いつも気付かぬ金の肢体の持ち主が愛しい、と。
声に出したら殴られそうだったので、あえて無言のまま想いの丈を口吻けに変えた。
「……っは…!………んん―――……っ……」
右手でエドの熱を煽り、左手で三つ編みの先を縛るゴムを解く。
さらりと流れ落ちた金糸が上気した頬や肩に散る様は、何度見ても艶やかな光に満ちていて、ごくりと唾を飲み下す音がやけに生々しく響いた。
「あ〜………も、ほんっとやべ〜って……」
「なっ!?ちょ…少尉待……っつ!」
「見てるだけでイキそーになっちまった」
「バ…カっ!………ん……ふ……ぅっ…―っ!」
恥ずかしげもなくこぼされる言葉に反論しかけた声音はしかし、蕩けそうに熱い直接的な刺激によって封じられる。
口を突いて出そうになる嬌声を飲み込もうとしても、鼻から抜ける吐息の甘さがエド自身が感じた快感を全て表していた。
「…ン〜〜っ!……ふっ……んッん――………っ…!……」
我慢強いのも時と場合による。
噛み締められた紅唇から漏れ出る声音は、時に酷くそそられる一因にもなるが、恋人としての我儘をあえて告げるなら、隠すことなくその全てを曝け出して欲しい。
「大将、声は抑えんなっていつも云ってんだろ?」
「や…だ……って…………あっ!も…っ……しゃべら……せ…なっ!!」
意地っ張りな恋人の頑固さは今に始まった事ではないが、エドが理性を手放すのを待っていたらいつその心地好い響きが耳に出来るか知れたものではない。
「ほれ、いつまでも意地張ってねーで、声出せ。じゃねーとイカせてやんねーぞ?」
骨太な指先が、今にも弾けそうになるエドの根元を戒め、にたりと意地の悪い笑みを浮かべた口元で、その先をひと舐めしてやる。
「んんっ!………ん――――…っ…!」
こぼれる響きに変化はなかったが、様子を窺おうと上げた青瞳をハボックは深く後悔した。
生理的な涙を金瞳の縁一杯に溜め、紅く染まった目元で睨まれてしまえば、この行為が自分にとっても自殺行為であったことに気付かされる。
さっきから疼く下半身は、中途で止められた熱を早く吐き出したくて、非常に切羽詰まった様相を呈しているのだから。
『あ〜〜〜〜っ!もうどうせ俺は堪え性のない大人ですよ!!』
何に対して怒りをぶつけていいのやら分からず、それでも塞き止めたエドの熱を先に解放してやろうと、再度中心に宛がおうと頭をかがめた瞬間、ハボックの耳に小さく届いた呟き。
「……………少尉……っやく……イカ………せ……」
「…………大将?……」
「……………ろっ!バカッッ!!!………」
最後は吐き出すように告げられた意地っ張りな恋人の、最大限の告解。
熱のせいだけではない頬の赤味を腕で隠されてその表情は見えなかったが、胸に灯る熱の熱さはきっと同じ。
「…イェッサー、俺も早くお前ん中でイキたいし」
「………………っさい……」
こぼされる悪態ですらも、色の違う腕の合間から見え隠れする潤んだ金瞳を目にしてしまえば、切れる寸前にまで達している理性の糸を、思わず引き千切ってしまいたくなるほどだ。
これ以上無駄に長引かせるのも互いの身に何1つ幸はなく、ハボックはゆるゆると根元を抑えていた指を、きつく張り詰めたエド自身に絡ませて口内に深く食い入れて扱いてやる。
「ああ――――……っっ!!」
恐らくは限界だったエドの解放はあっという間だった。
整えきらない喘ぎを漏らすエドの両手を顔の脇に縫い止め、アルコールとは別の苦味に濡れる口吻けを送れば、秀麗な眉がひそめられた。
「………苦い………………」
「そうか?俺には甘く感じるけどな」
笑っている顔も怒っている顔も、全てハボックにとっては心を高めてくれる表情だったが。
何よりも1番大好きな顔がある。
ハボックだけが知るエドのとっておきの顔。
誰よりもどんな時よりもココロ魅かれる最高に綺麗で艶やかな表情だが、絶対誰にも知られたくはない、見せたくない最大の秘密の顔だった。
「エド、イイ声聞かせてくれよ?」
濡らした指でそっとエドの後孔を辿り、僅かに疼く入口からそっと滑り込ませた。
「…ぁっ…く……っぅ………」
今まで自分は独占欲などないのだと思っていた。
過去振られた経緯の中には、「浮気しても妬いてもくれない」と云われたこともある。
だがエドに逢ってそれは違うと始めて気付かされたのだ。
好き過ぎて好き過ぎて、堪えようもなく湧き出る胸を焦がす熱い想い。
それは彼を腕に閉じ込めて、もう2度と離したくないと心底感じた欲の塊。
エドの旅を心から応援する一方で、反面心の裏側でホントはずっと傍にいて欲しいのだと願う自分がいる。
片時も離れず、傍にいて、すぐ手の届く場所で、互いの熱を感じていたい。
でも口にしたらエドが自分から離れていきそうで、怖くて云い出せない臆病な自分がいるのも知っている。そんな弱い部分を知られたくなくて、いい大人のフリで笑顔でいつも見送ってみても、エドが戻ってきて手の届く範囲にいてくれたなら、このまま離せなくなりそうな恐怖も浮かぶ。
結局どっちに転んでも怖いのは、惚れた者の負けと云うことかもしれない。
「………………ヘンな顔……してる……」
「エド、お前なぁ…」
「またヘンな…こと、考えてんだろ?」
ハボックの本音を嗅ぎ取ったのか、腕の下で輝く金瞳は鮮やかな光を浮かべて微笑んだ。
「ふ…ぁっ……!……あっ!…しょ……い…っ!…」
「ヘンなことってナンだよ?」
「やっ!だ……ぁんん――っ!!……」
抜差しされる指の動きにエドの声にもまた荒い吐息が混じり始める。
揺れる細腰に手を這わせ、胸から腰にかけての弱い部分に口唇を辿らせれば、上下する胸の起伏が更に激しくなった。
「云ってみろよ、エド……」
「こん…な……云えね…………っつ!」
「感じすぎて声もない?そりゃ光栄だ」
「のっ!………バカ…やっ……!…」
先を急ぐ指に煽られて、増やされた本数が2本を越えた頃、その入口にひたりと熱い塊が押し当てられる。けれども入口に当てられたままそれは中に入る気配を見せず、怪訝に金瞳を上げたエドの視界に、思っていたより間近にいた青瞳が黙してこちらをただじっと見詰めていたのだった。
「……少尉…?…」
「エド……俺はお前の邪魔になりたくはない」
「………うん……」
「でももう手放す気にもなんねー。……………怒るか?」
真妙にこちらの返事を待つ姿は、年上だというのに何故か耳を伏せる犬を想像してしまって微笑ましい、とはエドの内心の呟き。
お互いに果たすべき目的があり、そのために歩みを止める事は絶対にない。
けれどもう、繋いだこの手を離せるほど安い想いでないのはお互い様なのだ。
「俺らって、ヘンなとこで似てるなって、思ったんだよ」
温度の違う左右の腕を逞しい首に絡ませて、伏せられたような耳元に紅唇を寄せる。
「いっつも、待たせてばかりでゴメン………でも俺だって、離れたくはないんだ…」
「エド………」
意地っ張りで素直ではないエドの精一杯の告白が、ハボックには何よりも心に響いた。
面と向かって云えない気恥ずかしさから、そのまま肩に顔を埋めてしまった肢体をきつく抱き締める。
「…………もうダメだ…………」
「……………うん?……」
返当になってない泣き言にエドが顔を上げようとした瞬間だった。
「ああぁっっ!!!………―――っ!……や…ぁっ…」
突然体内に押し入ってきた熱量の衝撃に、咄嗟に声を抑える事も忘れたエドの口から悲鳴とも嬌声とも取れるアルトがほとばしる。
「悪ぃエド……ホント限界…っ…」
「は…っ!……くぅっ……い………ん…っ…!」
一息に奥まで押し込まれたソレは、エドの身体が始めの衝撃に慣れるまでは動かずにいたが、次第にそのアルトが掠れた甘い声音に変わる頃には、一層の太さを増して律動し始めた。
「あ……んんっ……ふ……っ…―――…っん…!あっ!」
「……エド…………」
呼ばれる声に瞳を上げれば、揺すられた拍子にこぼれた雫が上気した頬を伝う。
それを優しく舐め取る仕草とは裏腹に、追い詰めるような腰の動きは激しくなるばかり。
繋がった部分から熱い痺れが背筋を這い上がって、思考を焼き切るほどの快楽が視界を更に潤ませた。
「……も………も…ぅ……っ!……だ……ん……くっ!」
「イキそう?」
頬を撫でる大きな掌が心地好くて、素直に頷く事にもためらいがない。
「う…ん……しょ…い……おれ……っ…もむ…り…ぃっ!…」
「俺もイクよ…エドん中キモチよすぎ……」
生身の足を抱えられて、深まった箇所から聞こえる卑猥な水音がハボックの動きに合わせて響いてるのだと気付いたが、もう身体を支配する感覚に逆らえる気力などなかった。
ただ身体を内側から焼き尽くすように燃える快感の波を、一刻も早く吐き出したいと願っていたのは2人とも同じだったのだろう。
好きで好きで、好き過ぎる想いは何度昇華しても、涸れることなく何処までも高みを目指して湧き上がってくる。
金と青の瞳に灯った光の先にある果ては、いつだって互いの胸の中に灯る想いに焦がれていた。
「一緒に……エド………」
「……しょ……………ぁ…はっ!………ジャ………ン……っっ!!」
ギリギリまで引き抜かれた後に、一気に突き入れられたハボック自身の雄刀が、エドの最奥に叩き付けるように穿たれる。
視界に散った閃光に、自身の解放を促して同時に果てた。
「は…………――ああ…あっ!………はぁ…っ!」
「………っ…く…!………」
しなった背中と押し寄せた荒い呼吸と、両腕で確かめたお互いの体温だけが、その場にある全てだった…………
「………………………だりぃ……………………」
「はいはい、大将次右足出せ」
大人しく目の前に差し出せば、力強く足首を取られて泡立てたタオルで意外にも優しく洗われる。
銃の扱いに慣れた掌は大きく、無骨な感さえあるが、それが実はとても器用に動く事は自分の身体で実証済みなエドにしてみれば、さしてそれは意外なことではないが。
先程まで情熱的に肢体を辿った指は、情欲の片鱗も見せずにただ穏やかに包むように足先までをキレイに洗い上げた。
「流すぞ」
「ん…」
熱い湯で泡と共に疲れも流れていくようで、エドの口から安堵の息が漏れる。
そんな姿を見守る青の瞳はとても和やかで、とてもさっきまで貪るように自分を抱いていた青年と同じ人物には見えなくて、苦笑する。
「?何だ?」
「べっつにー」
くすりと笑みをこぼすエドに疑問符を浮かべながらも、機会鎧が付いていて尚軽い肢体を抱き上げて、浴槽へと向かった。
「なぁ大将……」
「ん〜〜?………」
ハボックの鍛えられた熱い胸板を背もたれにしつつ、余りの心地好さにうとうとしかけたエドの耳元に、ふと思いついたような問いかけが届く。
「…………………気持ちよかった?」
「ゲホゴホゲホッッ!!!!!」
咳き込むたびに湯が激しく波打ち、顔にまで飛沫が飛ぶが、それどころではない。
「なっ?!何聞いてんだあんたはっ!!!」
「え〜〜〜、やっぱそこは気になるじゃん男としては」
「俺も男だっつーのっ!!」
「抱かれる方の感想はどうなんかなぁ〜〜、とか思うわけよ」
「んなんだからあんたはモテないんだよっっっ!!!!」
理性が飛んでる時ならいざしらず、気分が落ち着いた頃に真面目にそんな事を聞かれても、とてもじゃないが恥ずかしくてまともな答えなど出来るわけがなかった。
だがエドの照れ隠しの返事はハボックの痛いところを衝いてしまったようで、後ろから腰に回された腕に、何やら不穏な気配が滲んでいた。
「た〜いしょう〜〜?ソレは云っちゃいかん一言でしょう?」
「だっ!……ホントのことだ……ろっ!ちょ………んんっ!」
「今夜はもう許してやろうと思ってたのに、な…」
「……しょう………い?……ぅ…んっ!…」
湯の中で跳ねる指先が、身体を洗ってくれた時とは全く違う目的で、エドのラインを辿り始める。
「あ……んた!明日仕事…………」
「明日は非番。何だ、ソレ知ってて来たんじゃないんだ?」
「知る暇あるかよっ!!」
云われてみれば、駅から直接来たようなことを話していた気がするが。
それよりもう、包み込んだ手の中でまたも昂ぶりを見せてきている小憎らしくも愛しい恋人の痴態に、脳内の思考は膨らむばかり。
「そーゆー訳だから、大将付き合ってくれよ?」
「なに…がっ!………っも―……っっ!!」
抵抗を示す言葉とは真逆に、与えられる刺激にふるりと揺れる細い肢体を後ろから強く抱いて、ハボックは満面の笑顔で囁くのだった。
「大将、大好きだぜ?………好き過ぎてもう、止まんねーよ……」
想いを交わすのに言葉だけでは足りないから。
『何もないさ好きなだけさ それしか分からないさ』
離れていた時間を埋めるように、貴方の中に埋まりたい……………
2006/03/02 脱稿
Sawada Yukari Presents.
愛しのハボキング(笑)である彼方さんの誕生日に捧げたお話ですvv
ちょっとエロくて意地の悪いハボが書いてて楽しくてっっvvv
そしたら何とも素敵な1人Hハボが返ってきたんで一緒に付けてみました〜vv
かなたん、ありがと〜〜〜〜〜vvvv(感涙;;;
元絵が結構大きかったんで、縮小かけたら画質が落ちてしまったのが残念(号泣;;
実はハボエドで初めてのエロネタだったりしたんですが……ヌルいですか?
……そうデスか………orz
精進しま…………(泣;;;
彼方さんのサイトへはこちらからvv
精悍でカッコ可愛いハボが一杯いますvvv |

|