【CIVILIZED,SUICIDAL:T】










『CIVILIZED,SUICIDAL ゴミばかりだよ 埋めろ埋めろ 進化の果ては 破滅の足音』


















「Bチーム、ポイント1到着、オーバー」
「Aチーム、ポイント3到着、オーバー」
「Cチーム、ポイント10到着、このまま支援体制に入る、オーバー」



耳に付けたインカムから次々と入ってくる各チームの情勢に耳をそばだてながら、脇に吊るしたホルスターの重みを再度確認する。長年こうした状況の時に現れる、それは1つの癖みたいなものだった。



「チームヘッダーポイント0に到着。通信遮断後30秒後に突入開始。各自時計を合わせろ」



手首に巻いたダイバーズウォッチは、夜間でも文字盤が光る優れものであるが、いざミッション時には夜目の利く視界だけでその時刻を確認するのが定石だ。


合わせた時刻はもう少しで日付の変更を知らせる時を告げている。
今宵は極秘のミッションを遂行するには最も適した新月の夜。
おそらくは簡単に事が運ぶ事だろう。


だが油断は禁物。
慣れが引き起こす気の緩みが、時には生死を分かつ事になる危険性を孕んでいるのは、誰よりも自分が1番よく知っている。



ホルスターから覗くグリップの感触を手にし、使い込んだ愛用のマグナムを顔の正面にかざしながら、目標となる建物までの位置を測り、右耳のインカムに最後の指示を出した。





「これより一切の通信を遮断する。各自の健闘を祈る。コンバット・オープン」
「イェス・サー」
闇の中に佇む黒装束の影が、建物の死角のあちこちに音もなく忍び寄る。

どの人影も手に鈍色の得物を手馴れた仕草で構えながら、目指すはコンクリートの廃ビルの最上階。


44口径のマグナムを手に鋭くその階を見上げた瞳は、闇夜に似合わぬ抜けるようなスカイブルーだった。





29,28,27,26,25………
時計を見ずに心内でカウントされていく秒数は、たかが30秒ではあっても、この時だけは1時間にも匹敵する長さに感じる事がある。

逸る心を留めるために、突入ギリギリまでセーフティロックを外さずにいるのは、焦る気を鎮められずに引鉄を引いてしまわないため、軍での訓練で初歩に叩き込まれる鉄則だ。




10,9,8,7…………


脳内で回ったカウントが0を指した時、包囲したビルの3箇所から同時に銃火の音が響く。
1秒の狂いもなく突入が開始された事に小さな満足を覚えながら、スカイブルーの瞳の持ち主は、両手に握ったマグナムを室内へと向け、自らもその内部の暗闇へと身を躍らせるのだった。











































東方司令部を預かる若き司令官に、名指しで送りつけられてきた報告書に対して、大佐の肩書きを持つ漆黒の青年が出した答えは、「切り捨てろ」だった。


それがどれだけの痛みと憂慮を抱えて出された答えであるかは、そこに集った部下の面々には、嫌と云うほど分かっていた。いや、分からざるを得なかった。


だが一介のテロ組織の企みならまだしも、事が国家の転覆にも繋がりかねない一大事であるならば、大のために小を切り捨てるのは、軍内部には当然の了解事のはずである。
自らがスカウトし、後見を勤め、態度や言葉に表したことはなくとも、心中深く慈しんできた少年の命を紙屑のように散らせる事になろうとも。


青年のとった行動は、軍部の常識に照らせば筋の通ったやり方であるのだ。


それがどんなに非人道的で、結論を下した人物達に深い悔恨を残すに違いなくても。
表向きはそれでしか動かせないのだ。所詮は軍という大きな群れの中の1つの駒に過ぎない身であるならば。



ならば、部下である自分に取れた行動は、唯1つ。



国を背負う軍人ではなく、1人の人間としての自由を得ることだった。

何より、自分が今まで1番に思ってきた人間を、国同士の大儀や言い分だけで失う事など、とてもじゃないが考えられない。納得出来ない。

普段の飄々とした態度とは裏腹に、心の芯に眠らせてある闘争本能が鎌首をもたげて憤るのを、抑える術はもうなかった。






「大佐、明日から1週間の有休をもらいますよ」
「…………1週間で事足りるのか?」
こちらの思考などお見通しなのだろう、黒曜の眼差しは、いつものように感情を表さぬ冷めた輝きを有しながらも、どこか厳然とした意志と願いを共に浮かべながら、青瞳の青年の顔を見上げてくる。




「ヒューズ中佐のお陰で場所は割れてますしね。取り返すだけなら、俺の隊の奴あと5人ほどにおんなじだけの休みをくれれば、充分です」
国軍である軍隊を動かせないのであれば、個人が肩書きを捨てて挑むというその覚悟が見え隠れする、普段は茫洋と瞬く青瞳が鋭い光を宿して告げた。



「失敗しても、私は庇い立て出来んぞ?それでも行くか?」
「国家錬金術師はウチの最大の軍事力。それをみすみす他国にくれてやるほど、甘い大総統じゃないでしょう?成功すれば何のお咎めもないはず、ですよね?」



トップに立つ人間は、窮地の時に下を切り捨てる選択肢を常に持つという。だが今までこの国を支えてきた人間兵器の存在が、他国の物になるのをむざむざ見逃すほど性根の弱い権力者ではない。


いざとなれば、他国へ渡る前に身内である直轄の部隊によって、その命を持っていかれてしまう危険性もある。それを考えると、いてもたってもいられない焦燥に、身の内の何かが焼き切れそうになりそうだった。

その焦燥と怒りを余さず瞳に映す長身の持ち主を、黒曜の視線が何かを託すように再度見上げて告げた。



「よかろう。休暇を受理する。ただし1週間以内に片付かなければ、お前の軍籍は抹消する」
「有難うございます」
にいっと吊り上った口唇には酷く好戦的な笑みを乗せ、咥えた煙草の先で紫煙が微かに空気を濁す。




「事後処理もお前に一任する。好きにやれ」
「イェス・サー」
身体に染み付いた型で敬礼を返し、踵を翻した精悍な顔立ちに刻まれたのは、酷く野生的な獰猛な表情だった。





「感情的になるなとは云わん。だが冷静さを欠く無様な真似はするなよ」





無駄とは知っていながら、扉を抜けていくその広い背中に低い声音がかけられる。


だがそうは云いながらも、感情的になればなるほど、この青年が酷く無感情に使命に忠実になるのを誰よりもよく認識していたのは、送り出した青年の方だった。

少尉という肩書きは、誰よりも任務で冷酷になれる青年が自ら築いた末の地位である。
おそらく無事に遂行するだろう今回の秘密裏の任務の先に、救い出された少年の思考の先が読めて、1人残った執務室で黒曜の瞳の青年は、苦い笑みを小さく震わせるのだった。













「鋼の、お前はとんでもない奴に惚れられている自覚があるのか…?」
















































ガンガン…ッ……


銃身の短い銃よりも、遥かに激しいマグナムの反動を肩の筋肉で抑え込み、仕留めた相手が起き上がってこないのを確認してから足早にその通路を走り抜ける。


普段の任務であればもう少し時間にも弾にも余裕があるが、今回はその遊び弾がないため、一撃必殺で確実に相手の急所を狙うその狙撃に、一抹の躊躇いもなかった。


目の部分だけが現れた黒い覆面の中で、時折常夜灯に照らされるスカイブルーは一切の感情を切り捨てたような冷たい輝きを有し、駆けながら弾薬を装填し終えた先で、立ち塞がる人影に何の予備動作もなく銃口を向ける。そこから撃ち出された弾丸が声もなく相手の眉間にヒットしたのを視線の脇だけで捉え、足音を吸収する厚いゴム底のブーツは真っ直ぐに、最上階へと続く階段の端にその爪先を駆り出した。



駆け続けて多少荒げた呼吸を腹筋でぐっと抑え、鉄筋の床に響く足音に意識を集中させれば、渡された情報通りの数に、覆面の奥でひそりと喉を鳴らす。

勿論ソレは緊張のせいではなく、目論見通りに事が運んでいる愉悦のためだ。

人を殺すことに快楽を覚えるほど落ちぶれたつもりは毛頭ないが、滾る闘争本能は自分が自覚しているより余程強い脳内麻薬を分泌しているらしく、任務の遂行が果たされようとする頃には、自分でも抑えきれぬほどの際どい絶頂感が身を包む時がある。


平素では味わう事のない、命のやり取りを賭けた厳しい緊張と、それに伴う感情を麻痺させたような意識の底に眠る獰猛な理性の先走り。

熱くなるほどに冷めていく矛盾した理性の欠片は、不思議なほど冴え渡った五感を刺激し、クリアな脳裏に浮かぶのは、純粋に目の前に現れる敵という名のそれを速やかに排除しろと、四肢の隅々に伝令を飛ばしてそれを実行させるのだ。



ガゥンッ……



階上から放たれた銃火に咄嗟に反転して死角へと身を躍らせると、腰のサイドパックから目当ての物を取り出して、解除ピンを引き抜き回廊に向かって床を滑らせる。



「うわっ!」
「煙幕だ!目が…っ!」



回廊の先で上がった声音に、額にしていたゴーグルを下ろして脇に吊るしたホルスターから太い刃先のコンバットナイフを翻した。




「…っ!」
白い煙幕によって廊下全体の視界が利かない状態であっても、ゴーグルの奥のスカイブルーの瞳は銃火が撃ち込まれた時に瞬時に把握した敵の立ち位置と、煙が動く空気の揺れでもって巧みに1人また1人と、屈強な男達の群れを地に沈めていったのだった。





背後から追いついてきた味方の人影に向かい、ハンドサインだけで扉の両脇に援護を立たせ、無言で一斉に1番奥の部屋へと侵入を果たす。

予想に違わず、そこにいただろう敵方の陣営をも呆気なく離散させると、素早く奥に隠された扉へと足を向けた。そこに文字通り転がされていた人物を目にした瞬間の、青瞳の奥に浮かんだ激しい色は、薄暗い室内でも熾き火のように蠢く蒼氷の炎のようであった。






「………大将」






覆面の下から苦く押し出されたような掠れた声音が響き、それに反応するように、床に転がった肢体の持ち主は、うっすらと閉じられていた目蓋を重たげに開く。

金色に縁取られた中心で、夜闇に似合わぬ暁の光が何度か瞬きを繰り返し、ふと意識を戻すように見上げてくるのに、冷え切っていたスカイブルーがふと柔らかな輝きを帯びた。




「無事で………生きてて…」
良かった…という言葉は喉の奥に沈み、無言のまま逞しい腕に囲われた細い肢体の少年は、見慣れぬ格好の相手に一瞬身体を硬くするが、肩先に残る硝煙の匂いの中に微かにいつも嗅ぎ慣れている紫煙の香りを感じ取って、小さく安堵の息をこぼす。





「……………バカだな……助けてくれなんて、云ってねーのに」
言葉とは裏腹に、その広い背中を抱きしめ返したかったが、容赦なく奪われた機械の義肢のため、自分で上手く身体を支える事すら出来ない。

そんな不満を見透かすように視線だけで笑む青瞳の青年に抱きかかえられ、今は黒装束の人間だけが立ち動く廃ビルから、闇の中を抜けるように狭い車内に乗せられて、町外れへ向かう道程を辿るのだった。













後日、不審火が上がって全焼した廃ビルの奥の敷地に、盛り返されたような跡があった事に気付く者は、北との国境に程近い小さな町の住民には誰1人、いなかったのである。































































極秘の任務だったため、軍の回線は使わずに常宿にいた少年の弟に連絡を入れ、その足で司令部で待つ上司や同僚に、任務の成功を告げてもらう事にした。捕らわれていた少年の唯1人の身内である鎧姿の弟を筆頭に、今回の件で心労を重ねていた司令部の面々もこれで安堵するだろう。



軍属ではない彼の弟を使うのは多少心が引けたが、彼ら兄弟を家族や身内のように暖かく迎える司令部の人間には、彼からの報告と、彼自身の喜びの声が1番の吉報になるはずだ。








廃ビルのあった場所から数キロ離れた国道沿いの小さなモーテルに宿を取り、外の電話でそれらを済ませて戻ってくれば、室内に片手片足となった少年の姿はなく、バスルームの方から慌ただしい水音が聞こえてくるのに垂れた青瞳が苦笑を深めた。




「ったく、ちょっと目を離すとコレだ」
床に散らばる紅いコートや黒の上着を手に取り、それを壁のフックにかけようとして何気なく目についたその小さな染みに、すうっとスカイブルーの眼差しが細まる。


真紅に散ったその染みは、乾いて変色したせいでやっと気付く事が出来たほどの小さなものだ。


それでもそれを隠し通す少年の意地の強さを、何度心配してきたかいい加減言葉を重ねるのも腹立たしく思うことがあるのも事実だった。


今だって、おそらくは慣れぬ身体にあくせくしながらそれでも、自分の手を借りずにさっさと身繕いを行おうと必死な少年には悪いが、その身を案じるために無理を通してここまでやってきた恋人を自任する身にとっては、その意地の強さは最早何かを煽る行為にしかとれない。





「ちょっとくらい、お仕置きしたってバチは当たらねーよな」
幾ばくかの時は経っていたが、先程の戦闘で目覚めた自分が持つ獰猛な何かを全て鎮めるにはまだ程遠く、だからこそ普段愛用している香りと共に外気に身を浸して抑え込む努力をしていたにも関わらず、それを煽るように提示された気に入らない現実の血痕は、少年の身を気遣う想いよりもそれを上回る熱い情欲に火を点けてしまう結果になる。





「俺ちょーっとキレたかも」
口調とは打って変わって酷く楽しげに青瞳を眇めて、咥えていたまだ先の残る煙草を灰皿に押し潰すと、水音の途絶えぬドアに向けて、その長身の肢体を悠々と進ませるのだった。












































「う…わっ…染みると思ったら、ンなとこにも傷あったんか」
熱い飛沫に全身を打たせ、始めて気付く背中の傷口に、秀麗な顔が顰められた。

捕らえられた直後に機械鎧は無理にもぎ取られていたが、おそらくその時激しく抵抗した際についたのだろう傷口は、酷く擦りむけてかさぶたになりきらぬ箇所がまだ新しい血を滲ませている。

手の届く場所ではあるが、さすがに片手で身体を支えている今の状態ではそこに手をやることも出来ず、仕方なく壁のタイルに肩を寄せて、バランスを取りながらそっと汚れを落とすように腕を捻った。



「痛っ!あ〜結構派手に擦りむいたな。横向きに転がされてたから、気になんなかったのに」
服を着た状態では分からなかったが、湯を浴びると腕や脚のあちこちにも小さな傷がある事に嫌でも気付かされる。


勿論ダメージが1番大きいのは機械鎧との接合部だが、こればかりは技師ではない自分にはどうにも出来ないし、神経を繋ぐワイヤーも切断されているため、痛みも何も感じ取る事もないのがせめてもの救いだった。




「またウィンリィの奴にスパナ投げられそうだ…」
これ以上の傷はゴメンだと思うのだが、それを許してくれるほどあの機械鎧に全ての愛着を注ぐ幼馴染みの少女は甘くない。




「……まぁ、命があっただけでも良しとするか…」
強烈なスパナでの攻撃は、それすら折角助かった命を捨てそうなほどの威力を秘めていたが、家族同然である幼馴染みの少女や弟が下す鉄槌は、心配の裏返しだ。

それだけの心配と心労をかけている自覚があるエドにとって、その鉄槌は自らが受けねばならぬ痛みだと知っているからこそ、本当だったら避けられるはずの一撃を黙って受け入れる。

彼女らが心で感じた身を案ずるが故の痛みを、この身に深く刻むように。



「…………あ〜…っと…今回はさすがに少尉にも何か云うべき……かな…?」
普段は優しすぎるほどお人好しで、茫洋とした表情でいつも黙って身を案じてくれているあの長身の持ち主が、本当は誰よりも1番自分を心配して、心を砕いてくれているのを知っている。


今回もおそらくは相当の無理を押して、窮地に立たされた自分を救いに来てくれたのは、何も云われずとも気付いていた。











北の大国が、人間兵器と恐れられ蔑まれている国家錬金術師の技に、興味の牙を向け始めたのはここ最近の事である。水面下で密かに拉致されて、越境させられた錬金術師の数はもう両手を越える数になっていた。


軍属ではあるが、自らの身にも危険が及ぶかも知れぬと分かっていながら、大総統府からの密命を無視出来なかったのは、攫われた中に人体錬成の秘本を持っていると噂される人物の名が挙がっていたからに過ぎない。

攫われた手口と越境させられるルートを調べるだけだと云われてはいたが、思ってた以上にアジトの中枢に近付いてしまったらしく、不意打ちを喰らって狙われた時にはもうあの廃ビルに連れ込まれ、有無を言わさず機械鎧をもぎ取られてしまったのだ。


かなり綿密に狙う人選は為されていたのだろう。
エドが両手を合わせて錬成できることを知っていたからこそ、あの連中は迷わず右手を外す事を選んだに違いない。



「となると、結構国内にあっちの人間が入り込んでるって事だよな」
その辺の詳細をまとめて報告書として提出すれば、軍事介入とまでは行かなくとも、何らかの指示をあの最高責任者は下すだろう。

それ以上となると自分の出る幕ではないが、1人でも多く捕らわれた人達が解放されればと願った。



自分は危険を冒してまで助けに来てくれた人間がいたから、今こうしてまだ国内に踏み止まれている。それすら叶わずに、非人道的な扱いを受けて他国へと連行された人々を思って、エドは沈痛な溜息をこぼした。


大いなる力は、それを求める人間達には例えようもなく魅力的で、それでいて人を人とも思わない酷薄な行為を簡単にさせるほどの影響がある。
どんなに些細な事であっても、これが戦争となればもっと被害は甚大になるのだろう。



「俺は……運が良い……?」
生きる事を諦めた事など1度もないが、物のように扱われて他国の地を踏まされるかもしれないと思ったあの時の内心を鷲掴んだ恐怖は、熱い湯を浴びているにも関わらず、まだ鮮明にその肌を粟立たせた。



硝煙と白い煙幕と血の匂いをまとわせて、常と違う厳しい光を浮かべた青瞳が、視界を突き刺した時に感じたあの湧き上がるような熱い衝動を何に例えればいいのだろうか。

助かったと思う安堵と裏腹に、猛烈に起こった何で来たのだという怒りと、それを凌駕する脳裏を埋め尽くした熱い想い。






「くっそ……何でホントに……こんな事で気付くなんて…」
来てくれたと、喜びを素直に表現するには余りにその裏側が分り過ぎてしまっていて、青年の覚悟の程を思って不意に何かに叫び出したい気持ちを必死に堪える。







「そんなに………大事だとでも云うつもりかよ…」
「云うつもり、だよ」







突如降って湧いた声音に、咄嗟に振り返ろうとした肢体は呆気なくバランスを崩し、倒れそうになる身体を支えて抱きかかえた逞しい腕の持ち主に、そのまま背後から呼吸を止めそうなほどきつく抱きすくめられた。


触れ合った素肌は湯の温度以上に熱い火照りを生み出し、すっぽりと収められてしまった肢体には抵抗するだけの四肢が揃っていない事もあり、体重を預けた背後の人物の意思通りに顎を捕らえられても、それを防ぐ術はない。



「……っは……んん……っ…!」
上向かされた顔に熱い飛沫と共に降る口吻けを、受止める他ない状態の中で、触れ合った肌の温度がより一層高まっていくのを霞む思考で理解しながらも、抱いた腕が辿る愛撫の仕草に先程とは別の意味で肌が粟立っていくのを止められなかった。




「しょ……少尉……ッ…!…」
「俺が何で怒ってるか、分ってるよな?」




薄く開いた金瞳に映る青瞳は、暗闇の廃ビルの一室に射した厳しい光そのままに自分を射抜き、それ以上に熱い温度をまとって激しい色を浮かべている。

その奥に佇む青年の怒りは身を抱いた腕の力にも容赦なく込められていて、振り解けぬ肢体が諦めのような小さな吐息をこぼして告げるのだった。






「付き合えよ、大将。俺の気の済むまで」
普段はこんな高圧的な物言いはしない青年が、ここまで気を荒ぶらせるのに思い当たる節が満タンにある少年は、生身の左手を無言で青年の頭に向けて伸ばす。





彼の受けた痛みを、全て受け止めるため………





水音の止まぬ浴室で重なった人影は、長い間別たれる事はなかったのだった。














































to be continued…




2006/08/06 脱稿
Sawada Yukari Presents.

念願のジャク×エド……(?)
果たしてコレがそう呼べるシロモノなのか、はなはだビミョ〜ではありますが(汗;;;;;
実はコレがホントはハボの日用に目論んでいたSSです(笑)
でも何だかしらんが続いてしまっ……(滝汗;;;;;;;;;;
すいません…続きはまったり更新するかと思います(謝…|||orz…
でも次で何とか終わらせますのでっっ(>_<)!!!!!!!!!!!!
途中で何度もハボがヘタレになりかけて、何とかココまでは男臭くなったかな…と思ってるんですが。やっぱり気を抜くとヘタレになってしまいそうで、続きが難しいんです(泣;;;;
しかもよく見たら何だか途中でハボがラビに見えるよコレ…(爆…
ホントにホントにすいません……………精進しま…………(汗;;;;;;